糖尿病とは

糖尿病

糖尿病は、何らかの原因で血液中のブドウ糖(血糖)がうまく細胞に取り込まれず、血糖値が高くなってしまう慢性の病気です。「糖尿病」という名前の通り、血糖が高くなると尿に糖が混じることがありますが、これは血糖値が160〜180mg/dLを超えたときに起こります。診断には血糖値の測定が不可欠です。
高血糖の状態が続くと、血管がじわじわと傷つき始めます。特に腎臓・目・手足の神経など、細い血管が集まる部位では早い段階から影響が出やすく、「糖尿病性腎症」「糖尿病性網膜症」「糖尿病性神経障害」は三大合併症と呼ばれています。さらに、動脈硬化が進行することで脳や心臓の血管も狭くなり、「脳卒中」や「心筋梗塞」のリスクも高まります。
これらの合併症は、人工透析や失明、足の切断といった深刻な結果につながることもあり、早期発見と治療が非常に重要です。最近では、健康診断では見落とされやすい“かくれ糖尿病”も問題となっており、必要に応じて食後血糖や糖負荷試験などの詳しい検査を受けることが勧められます。

1型糖尿病と2型糖尿病

糖尿病は大きく2つのタイプに分けられます。ひとつは1型糖尿病と呼ばれるもので、これはインスリンを作成する膵臓のβ細胞が主に自己免疫等によって破壊されてしまい、インスリンがほぼ分泌されていない状態になります。小児期~青年期に発症することが多いです。もうひとつの2型糖尿病は、遺伝、体質的な素因、不摂生な生活習慣(過食、運動不足、喫煙、飲酒、ストレス 等)の蓄積によって発症します。この場合は膵臓が疲弊しており、インスリンの分泌が少ない、あるいは分泌量が十分でも効きが悪い(インスリン抵抗性)状態になっています。2型は中高年世代~高齢者の世代に発症しやすく、日本人の全糖尿病患者さんの95%以上を占めるとも言われています。
上記以外にも、遺伝子異常や何らかの病気(肝疾患、膵疾患等)、薬剤の影響で糖尿病を発症することもあります。また妊娠中の女性は、インスリンの効きが悪くなるホルモンが分泌されるので血糖値が高くなる傾向にあります。この状態を妊娠糖尿病と言います。

主な症状について

発症初期の頃は、自覚症状がみられることがありません。そのため、多くの患者さんは放置状態を続けることになります。ただある程度まで進行すると、喉が異常に渇く、多尿・頻尿、全身の倦怠感、体重減少などの症状がみられるようになります。心当たりがあれば、速やかにご受診ください。
なお血液中でブドウ糖が増えすぎることは血管を損傷し続けることにもつながるわけですが、何もしなければやがて血管障害を引き起こすようになります。なかでも細小血管が集中する部位(網膜、腎臓、末梢神経)は合併症のリスクが高く、糖尿病網膜症(失明の可能性もある)、糖尿病腎症(人工透析の可能性もある)、糖尿病神経障害(足の壊死の可能性もある)は、糖尿病三大合併症と呼ばれています。また太い血管は動脈硬化を促進させてしまうので、脳梗塞などの脳血管障害、心筋梗塞など重篤な病気を併発させることもあります。

治療について

糖尿病を完治させるのは、現時点では困難とされています。この場合の治療の目的は、血糖をコントロールし、合併症を予防することにあります。なお治療内容は、1型と2型で異なります。
1型糖尿病の患者さんでは、ほとんどインスリンが分泌されていません。そのため、体外からインスリンを補充していくインスリン注射によって、血糖をコントロールしていきます。
一方、2型糖尿病の患者さんは、インスリンは不足していますが、分泌が残っている場合は、生活習慣の改善から始めていきます。最も大切なのが食事面です。具体的には、膵臓を酷使させないよう適正エネルギー摂取量を心がけます(食べ過ぎない)。この摂取量を算出する計算式は、以下の通りです。
適正エネルギー摂取量(kcal)=目標体重(身長(m)×身長(m)×22)×身体活動量(デスクワーク中心の方は25~30 kcal/kg、立ち仕事中心の方は30~35 kcal/kg、重労働の方は35kcal/kg以上)
また栄養バランスがとれた食事にも努めるようにします。糖質制限は栄養バランスが悪くなるためしないようにしましょう。また食物繊維やミネラル等が豊富な食品(海藻、きのこ類、野菜 等)を積極的にとるほか、塩分の量も少なくします。このほか食品交換表を使用し、効率良く栄養素を摂取できるメニューをチョイスしていきます。
さらに日常生活に運動を取り入れることは、血中のブドウ糖を減少させやすくするので実践するようにしてください。ハードな運動量は必要ありません。1日30分、息がやや上がる程度の有酸素運動(軽度なジョギング、サイクリング等)で効果が見込めますが、できるだけ継続的に行うようにしてください。
これら日頃の生活の見直しだけでは、血糖のコントロールが困難であれば、併せて経口血糖降下薬による薬物療法も行います。この場合、患者さんの症状や状態に合わせて、インスリンの分泌を促進させやすくする内服薬、インスリン抵抗性を改善させる内服薬などが用いられます。これら内服薬でも効果が乏しい場合には相談の上、インスリン等の注射製剤を用いた治療も提案させていただきます。

糖尿病の合併症について

糖尿病は放置するとさまざまな合併症を引き起こす可能性があります。以下に主な合併症を説明します。

血管合併症

  • 動脈硬化: 高血糖が続くことで血管が硬くなる状態です。これにより、心筋梗塞や脳卒中のリスクが高まります。

神経障害

  • 末梢神経障害: 手足のしびれや痛みを引き起こすことがあります。これにより、感覚が鈍くなったり、怪我に気づきにくくなることがあります。

視力障害

  • 網膜症: 高血糖が目の血管に影響を及ぼし、視力を低下させる原因になります。進行すると失明のリスクがあります。

腎臓障害

  • 糖尿病腎症: 腎臓が正常に機能しなくなり、最終的には腎不全に至ることもあります。

足病変

  • 糖尿病患者は足にトラブルが起こりやすく、感染や潰瘍を引き起こすことがあります。重症化すると足の切断が必要になる場合もあります。

認知症

  • 糖尿病患者は認知症のリスクが高いことが研究により示されています。高血糖が脳の血管に悪影響を及ぼし、認知機能を低下させる可能性があります。

糖尿病の合併症は無自覚で進行することが多いため、早期発見と適切な管理が重要です。定期的な健康診断や医療機関でのフォローが必要です。生活習慣の改善や、医師の指導に従うことが大切です。